Petronas Malaysian Fomula One Grand Prix


10月17日、日曜日。いよいよ決勝の日です。マレーシアGPで一番心配されている天気はどうでしょうか。私が家を出たときは薄曇りでしたが、マレーシアの天気は、全く予想がつきません。10:30頃セパンF1サーキットに到着すると、昨日よりも断然大勢の人で賑わっています。

決勝レースがスタートするのはPM2:00。まだ時間がありますが、その間、コースでは、Proton Satriaのレースマレーシアの民族衣装での仮装大会など沢山の催し物が行われます。

左の写真は消防隊の行進、右の写真は鼓笛隊のパレード。他にも、マレーシア空軍のパラシュート部隊が空から降りてきたり、F-18戦闘機のアクロバット。因みに、時速2,100kmとの事で、F1の7倍のスピードであると強調してました。

何だか不思議なクルマのリアゲートが、火花と水蒸気を吹きながら開きました。いよいよ、マハティール首相による開会宣言らしいです。尚、中にはマレーシアカラーのフォーミュラーカーが入ってました。

下の写真は、ヴィンテージカーに乗ってのF1ドライバーの行進。何と、先頭のクルマには、マハティール首相が乗っていました。(う〜ん、金網が邪魔だ〜っ)

マハティール首相 シューマッハーとアーバイン 高木の虎ちゃんも健在です。

さて、いよいよ決勝レースのスタートが近づいてきています。フェラーリのピットも最後の調整に余念がありません。今のところ、マシーンのセッティングは万全。予選で1位・2位を独占したのは伊達ではありません。でも、脚を骨折して暫く休んでいたシューマッハー復帰第1戦でポールをとるところなんか、本当に凄いです。
ところで、レースといえばやはりレース・クィーン。ハイレグで日傘を持ってドライバーの横に立っているのが我々の一般的なイメージですが、マレーシア=イスラム教徒が多いという配慮からか、レース・クィーン(ここでは「グランプリ・ガール」と呼ぶらしい)は肌の露出がとっても少ないコスチュームです。ちょっとガッカリ・・・

場内には大型スクリーンが数カ所設置されていて、レースの状況が判ります。ところで、スクリーンの向こうに見えるスタンド、空席が目立つのですが、、、。やはりマレーシアの人達にとっては高価な入場料なので、あまり来ないのかな?因みに、この日の観客は8万人だったとのこと。

さて、いよいよ決勝レーススタートの2:00が近づいてきました。我々のスタンドの人達も立ち上がって、その瞬間を今か今かと待ち望んでいます。パドック上のVIPの人達も、みな屋上の手すりに集まってスタートラインを凝視しています。盛り上がってきました。。。


マレーシア時間の2:00ちょうど、いよいよ東南アジア初開催となるマレーシアGPのスタートです。心配していた天気も大丈夫。路面温度は早くも44度。フォーメーションラップが始まったが、プロストチームのトゥルーリは、押し戻されてピットスタートです。スターティンググリッドにマシーンが勢揃いし、グリーンフラッグが振られました。シグナルのが赤から青に変わって、レースがスタート!!

(左の画像をクリックすると、スタートシーンのムービーが見られます。サイズが1MBとちょっと大きいですが、ダウンロードまでちょっと辛抱して下さいね。尚、ムービーを再生するには、QuickTimeが必要です。)


以下、Niftyserveのモータースポーツフォーラムの実況より。


ラスト1週、フェラーリのピット内の人達全員が、勝者を迎えるためにピットを飛び出してきました。そのまま1・2体制でチェッカーフラッグを受けました。

結局、フェラーリがポール・トゥ・ウィンで優勝してマハティール首相から優勝カップを受け取りました。。。と、ここまでは良かったのですが、この後、とんでもない展開に。。。今回のレースの最終結果は以下の通り。ん?、何でフェラーリがいないんだって? このページの最後の方をお読み下さい。

※注意:その後、結局、国際自動車連盟は23日、フェラーリ・チームからの抗議が正当と認められ、フェラーリの2台の失格は取り下げられました。詳細はこちら。


P No. Driver Car Lap GoalTime km/h
1 1 M.ハッキネン (FIN) McLaren Mercedes 56 1:36'48.237 192.576
2 17 J.ハーバート (GBR) Stewart Ford 56 - 7.795 192.309
3 16 R.バリチェッロ (BRA) Stewart Ford 56 - 22.553 191.823
4 8 HH.フレンツェン(GER) Jordan Mugen-Honda 56 - 25.141 191.737
5 11 J.アレジ (FRA) Sauber Petronas 56 - 44.665 191.098
6 10 A.ブルツ (GER) Benetton Playlife 56 - 51.191 190.885
7 21 M.ヘネ (ESP) Minardi Ford 55 - 1Lap
8 5 A.ザナルディ (ITA) Williams Supertech 55 - 1Lap
9 9 G.フィジケーラ (ITA) Benetton Playlife 52 - 4Laps
DNC
22 J.ビルニューブ (CDN) BAR Supertech 48 - 8Laps ギヤボックス
12 P.ディニス (BRA) Sauber Petronas 44 - 12Laps スピンアウト
14 P.デ・ラ・ロサ (ESP) Arrows 30 - 26Laps エンジン
20 L.バドエル (ITA) Minardi Ford 15 - 41Laps エンジン
2 D.クルサード (GBR) McLaren Mercedes 14 - 42Laps エンジン
6 R.シューマッハ (GER) Williams Supertech 9 - 47Laps スピンアウト
15 高木 虎之介 (JPN) Arrows 7 - 49Laps ドライブシャフト
23 R.ツォンタ (BRA) BAR Supertech 7 - 49Laps スピンアウト
18 O.パニス (FRA) Prost Peugeot 7 - 49Laps エンジン
7 D.ヒル(GBR) Jordan Mugen-Honda 0 - 56Laps 接触(フィジケーラ)
19 J.トゥルーリ (ITA) Prost Peugeot 0 - 56Laps エンジン DNS
4 E.アーバイン (GBR) Ferrari 56 失格
3 M.シューマッハ (GER) Ferrari 56 失格

* Fastest LapTime : 1'40.631 (191.530km/h) HH.フレンツェン On 53/56 Lap
* 失格したフェラーリはFIAに提訴中

☆ファステストラップ

HH.フレンツェン 1'40.631 (191.530km/h) On 53/56 Lap

☆ラップリーダー

1〜 3 シューマッハ
4〜25 アーバイン
26〜28 シューマッハ
29〜41 アーバイン
42〜52 シューマッハ
53〜56 アーバイン

☆F1世界選手権ポイント

*ドライバーズ部門
1 ハッキネン 72
2 アーバイン 60
3 フレンツェン 53
4 クルサード 48
5 R.シューマッハ 33
6 M.シューマッハ 32
7 バリチェッロ 23
8 ハーバート 18
9 フィジケーラ 13
10 サロ 10
11 トゥルーリ 7
11 ヒル 7
13 ブルツ 4
14 アレジ 3
14 ディニス 3
16 パニス 2
17 デ・ラ・ロサ 1
17 ヘネ 1

*コンストラクターズ部門

1 マクラーレン 120
2 フェラーリ 102
3 ジョーダン 60
4 スチュワート 41
5 ウイリアムズ 33
6 ベネトン 17
7 プロスト 9
8 ザウバー 6
9 ミナルディ 1
9 アロウズ 1


以下、Niftyserveのモータースポーツフォーラムより

●マレーシアGPレース結果に関するFIA裁定

速報その1

エディ・アーバインとミハエル・シューマッハが1-2フィニッシュを決めた本日のマレーシアGPで、2台のフェラーリF399がFIAのテクニカル・レギュレーションに違反していると、FIAが声明で述べた。FIAがどのような行動をとるのか、そしてこの裁定により、レース結果が無効になるのかどうかについての直接の言明はなかった。
アーバインとシューマッハが失格になるとすれば、3位のミカ・ハッキネンがレース・ウィナーの宣告を受けることになり、10月31日の日本での今季最終戦を前に世界選手権の王座をほぼ間違いなく掌中に収めたことになる。
大会審査委員会は、フェラーリのチーム・マネージャー、ジャン・トッドに、即刻出頭するよう求めた。「レース後、カー・ナンバー03(シューマッハ)および04(アーバイン)はボディワークの適合検査を受けた」と、FIAの技術代表、ジョー・バウワーの最初の声明には記されている。「地表に面しているボディワークを調べたところ(第3.12.1条)、ディフレクター・パネルの上部が基準面と段差面のいずれにも位置していないことが判明した。個人的な意見では、いずれの車も1999年度FIAフォーミュラ・ワン・テクニカル・レギュレーション第3.12.1条を遵守していない」

速報その2

フェラーリのエディ・アーバインとミハエル・シューマッハは日曜日に行われたマレーシアGPで失格とされ、ワールド・タイトル獲得が約束される1勝を、マクラーレンのミカ・ハッキネンに手渡した。このあっと驚く決定は、レース後3時間も経たないうちにF1の統括団体であるFIAにより発表された。その後のFIAの発表によれば、アーバインとシューマッハが乗り込んだ車はFIAが定めた技術仕様に従っていなかったのだという。
この裁定にどういう意味があるかといえば、これで、同レースを3位で完走したハッキネンが勝者の宣告を受けたということだ。勝者に与えられる10ポイントにより、10月31日、鈴鹿で行われる今季閉幕線を前に、ハッキネンはドライバース選手権で不動のリードを築くことになった。フェラーリは、このFIA裁定を控訴することができるが・・・。



☆失格のアーバイン、現在の心境を語る

歓喜の優勝から、休養のため訪れたマカオで失格の裁定を知らされたエディ・アーバインは、現在の心境を次のように語った。
「そんなことでわれわれのポイントや世界選手権でのリーダーシップが取り上げられたなんて信じられないよ。第一、犯した罪に対する罰のほうが厳しすぎると思わないかい。僕はチームが正当な対応をして、われわれを守ってくれると願っている。だって、僕ら、いちドライバーには何の手段も与えられていないんだからね。僕には、マシンはニュルブルクリンクの時と同一のものだったし、僕はそれをドライブしただけだって、それしか言えない。こんな形で世界チャンピオンが決まるなんてつまらないよね。最終的な裁定結果が出されるまではわからないけれど、どうかFIAが公正な判断をしてくれることを祈っている」

☆新チャンピオン・ハッキネン、現在の心境を語る

フェラーリ2台の失格裁定により、今季のチャンピオンが決定したマクラーレンのミカ・ハッキネンが、現在の心境を語った。
「チャンピオンになれたことは喜ぶべきことだけれども、世界タイトルはちゃんとした競技の上で決定されるべきでこんなルールの上での失格などで決まるというのは正しいことじゃないと思っている。僕自身もトラックの上でエディ(アーバイン)とフェアに戦って決着をつけたいと考えてきたからね。こういうのは好きじゃないな。ただ、チームは(裁定結果が出て)最終的な結論が出るまで軽率な発言をするなって言ってるから..」

☆ジャン・トッド監督(フェラーリ)、辞意を表明

フェラーリ・チームのジャン・トッド監督は、先のマレーシアGP決勝レースでチームの2台ともが車両規定違反で失格処分となった責任をとり、18日(月)フェラーリのモンテツェモロ会長に辞意を表明した。同会長は辞任を認めておらず、またトッド監督は車両規定違反を認めたうえで「何のアドバンテージにもならなかった」と語っている。


☆マハティール首相、マレーシアGPの成果を強調

マレーシアGPを現場で観戦した同国のマハティール首相は東南アジアで初めて開催されたF1グランプリが、マレーシアを世界にアピールするのに多大な効果を挙げた、と強調した。
自動車好きの同首相は、率先して今回のF1グランプリ招致をFIAに働きかけてきていた。またザウバー・チームのスポンサーであるペトロナスはマレーシアの国営石油企業で、今大会の冠スポンサーでもあった。


上位2チームのコメント

[訳注:このコメントは失格の裁定が出る前のものです]

●スクーデリア・フェラーリ

★ジャン・トッド

チームが見事に働いてくれた日は、なんと気分がいいことだろう。ミハエルはフェラーリとエディのために並はずれたレースを見せてくれた。彼なりに、ものすごいプレッシャーを感じていただろうに、ひとつのミスもなく、そうしたプレッシャーを見事にコントロールした。この成績は、ここ数戦のレースの後だけに、チームにとってすばらしいものだ。われわれは両方の選手権でリードしている。後は、その順位を維持するために、できることはなんでもやらなければならない。事実、今回も、この3年間と同じように、すべてが最終戦にかかっている

★エディ・アーバイン

ぼくにとっても、フェラーリにとっても夢のような成績だ。ミハエルについて言えること? 彼が最高のナンバー・ワンだということは分かっていたが、これで最高のナンバー・ツーだということも分かった。ぼくのために辛い仕事をすべて引き受けてくれた。ぼくはスタートは征することができたけど、切り込むときに車がかなり敏感で、特にクイック・コーナーだと、スピンするんじゃないかと心配したほどだった。だから、あまりハードに攻めずに、ミスを犯さないよう心がけた。クルサードがぼくより速かったので、プレッシャーをかけてきたけど、パスされるとは思わなかった。ミカが2回ストップなのは分かっていたけど、なかなか入らないものだから、1回ストップなのかもしれないと、だんだん心配になってきた。選手権はまだなにも決定していないし、鈴鹿ではなにが起きても不思議じゃない。車の調子がいいから、ぼくらには両タイトルを取る可能性がある。ミハエルの復帰が大きなボーナスになった。これまで鈴鹿では6位、5位、4位、3位、そして2位で完走してきた。だから、後はその順番に従って、まだ埋めていないところを埋めたいね

★ミハエル・シューマッハ

今日の活躍ぶりで、チームがどれほど強いか、そして車がどれほど優れているかを見せつけた。ここでも、作戦が完璧に機能したね。デビッドの動き方にはちょっとびっくりさせられたよ。もしかしたら、数戦を欠場したために、経験不足になっちゃったのかな! あのときは互いに接触して、車にわずかなダメージを受けた。そのせいで、2セット目のタイヤの時はひどいアンダーステアを抱え込むことになったよ。エディを行かせたことにはなんの問題もなかった。それが、両方の選手権にとって望み得る最高の成績だったからね。チーム入りして以来、みんながぼくのために働いてきてくれた。だから、ぼくがなにかお返しするのは、ちっとも不思議なことじゃない。もちろん、エディが差を築けるように、ちょっとゆっくり走るのが自分の仕事だった。そして、それはフェアにやったよ。それからは、もう一度ハードに攻めて、ハッキネンが1回しかストップしなかった場合に備えて自分のために差を築いたんだ。

●マクラーレン・メルセデス

★ミカ・ハッキネン

厳しいレースだった。レース中はほとんどをミハエル・シューマッハの後ろで過ごした。そして、彼に順位争いを挑めるだろうかと考えながらも、パスすることはできなかった。そうなった理由の中には、彼の不安定なドライビング・パターンで自分がつまみ出されなくなかったので、慎重を期して走る必要があったということもあった。彼は高速コーナーでのスピードが大きくばらついていたから、突っ込まないように慎重になる必要があったんだ。だけど、まだ終わってないよ。まだ日本があるし、日本では大丈夫だという大いなる自信があるんだ

★ロン・デニス

デビッドはすばらしい仕事をしていたが、そんなときに、燃圧が失われてしまったんだ。原因についてはまだ調査中だ。もちろん、ライバルが、こっちの行動を邪魔するような作戦を展開しているときに、強さを失わずにいるのは難しい。しかし、エディ・アーバインはまだミカを4ポイントリードしているだけだし、昨年と同様、すべては今季の最終戦で決することになる



中島企画からのレポート

予選: 10月16日/曇
決勝: 10月17日/晴
サーキット: マレーシア・クアラルンプール市郊外セパン・サーキット
距離: 5.542km×56周=310.352km

高木虎之介、激走を見せ予選22位から3周目には13位へジャンプアップ!しかし、ドライブシャフト破損で痛恨のリタイヤ!

マレーシアへは早めに移動!
ヨーロッパGPを終えて、今期のヨーロッパでの活動を全て終えた高木虎之介はいったん本拠であるロンドンに戻り、9月30日には日本へ向けてヨーロッパを後にした。高木にとっては開幕戦オーストラリアGPの直後に日本を経由してロンドンに戻って以来、約半年ぶりの帰国となる。マレーシアと日本の時差が1時間であることから、日本GPへ向けた取材活動と時差調整のための早期帰国となった。この間、チームメートのペドロ・デ・ラ・ロサ選手が10月4日〜5日に、サンタポッド・ドラッグレーシングコースでマレーシアGP用のレース車両3台をシェイクダウンして、レースに備えた。アロウズ・グランプリは、10月6日〜8日に行われたスペインのバルセロナ・サーキットでの合同テストには参加しておらず、他チームがテストしたマレーシアGP用の「エクストラ・ソフト」タイヤのデータが少ないというハンディキャップを負ってのマレーシアGPとなった。高木は、高温多湿のクアラルンプールに慣れるため、通常よりも早い10月12日の火曜日に現地入りした。

マレーシアは誰にとっても初めてのサーキット!
金曜日のフリー・プラクティスは、高木は午前、午後ともにレースを想定して燃料を多めに搭載したセッティングに集中する。ドライ用タイヤは、頻繁にはレースが行われていない路面のためにグリップしないことを想定して、ブリヂストンが持ち込んだ2種類のタイヤの中からラップタイムを追うよりも、コースに慣れるため距離を長く走れる固めの「ソフト」タイヤをチョイスした。路面は朝方の降雨のためにウェットであり、そのソフトタイヤも路面が乾いてくるまでは使えないという状態であった。レース直前の合同テストに参加しておらず、本命の「エクストラ・ソフト」タイヤの走行データが他チームと比べて不足していることが、やはり、大きなハンディキャップであることは否めない。ソフトタイヤでコース習熟に努める一方で、エクストラ・ソフトでのデータが回収できないという厳しい実状に直面してはいる。が、その一方で、セパン・サーキットを走るのは誰にとっても初めてということから、現在のアロウズA20の最も大きな欠点のひとつであるオーバーステア傾向は、顕著にはタイム差となっては現れず、チームメートのペドロ・デ・ラ・ロサ選手と揃ってタイム的には直接のライバルとなるミナルディ勢ともラップタイム的には大きな差は開かなかった。

高木は、路面がドライとなった午後のセッションでも1セット目のタイヤを使用し続けタイムアタックを行うが、2セット目のタイヤにエクストラ・ソフトを使用してタイムアタックしたロサ選手からはベストタイムで約1.3秒程遅れてしまう。「エクストラ・ソフト」タイヤは、計測1周目以降は、大きくパフォーマンスが低下して、計測2周目以降は、1秒近くラップタイムが落ちるという特性を持っているが、前述のように、その特性データがチームに無いのが痛いところではある。少なくとも、高木に関しては、ラップタイムこそ奮わなかったものの、メカニカルトラブルが全く発生せず、とりあえずはプラン通りに走行データ収集を完了して1日の走行を終えることになった。

予選がセッティング作業に!
高木は、土曜日午前の1回目のプラクティスにおいて、前日のデータを元に、さらに微調整を施したサスペンション・セッティングをトライし、バランスを大幅に向上させると、初日に使用した中古タイヤでありながら、大きくラップタイムを向上させることに成功する。2回目のプラクティスでは2セット目のタイヤに本命のエクストラ・ソフトタイヤを投入して、予選シミュレーションのタイムアタックを行う。が、ここで、エンジン・トラブルが発生して、残りの約35分を走行できなくなってしまう。この35分のロスタイムの間に、路面の状況、そして他のドライバーのラップタイムが飛躍的に向上し、高木のセッティングは全く進まないままに予選に臨まねばならなくなってしまう。しかも、予選用に搭載することになったエンジンは、本来はレース用に使用する予定のもので、エンジン特性のスペックが違う。つまり、高木は予選を全くセッティングを0の状態から行わなければならなかったというわけだ。予選開始直後、高木はすぐにコースインし、とりあえず1計測を行い未知のセッティングをチェックする。当然ラップタイムは遅く、その後、調整を進めながら、残る3回のタイムアタックを続行するが、自己ベストのタイムは午前中の中古タイヤでマークしたタイムからわずかに0.3秒しか更新できないという状態で22番手の予選順位が決定することになる。

ポールポジションは、イギリスGPのレース中のクラッシュで足を骨折して休場していたフェラーリのミハエル・シューマッハ選手が復帰委第1戦にして獲得という驚きのパフォーマンスで貫禄を見せつけると共に、2番手には僚友のエディ・アーバイン選手が続いて、フェラーリがタイトル争いを決して諦めていないということを印象づけた。3番手はマクラーレンのデイビッド・クルザード選手が入った。

ウォームアップでセッティングを進める!
レース当日のウォーミングアップセッションは、心配された雨の影響もなく、ドライ路面で行われた。高木は、2ストップ戦略を前提とした量の燃料を搭載し、プラクティスと予選で得られた走行データを元にした最終的なシャーシ・バランスのチェックを行う。が、ここで、またもトラブルが発生。高木のレースカーが、コースイン直後に電装系のトラブルでストップ、残りの時間をスペアカーで走ることになってしまったのである。今回のスペアカーはチームメートのペドロ・デ・ラ・ロサ選手用にセットアップされていたこともあり、高木にとってはまさに万事休すの展開である。

レースは激走に次ぐ激走で大健闘!
高木はレース直前のコースコンディションにセッティングを合わせるため、レーススタートのグリッドに付くために通常より多い3周のコースイン走行を行い、マシンのフィーリングを確認。3日間で最もまとまったセッティングとなったことを確認して、グリッドに着く。ウォームアップ走行から変更すべき改良点は多くは無かったが、なんとかエクストラ・ソフトタイヤでの対応は完了したことになる。スタートは問題なく進行したが、第1、第2コーナーが狭いために、予想通り中段グループで波乱が起きた。第2コーナーでジョーダンのデイモン・ヒル選手がスピンしたために、それを避けるために後続集団が大混乱に陥ったのである。それを予想していた高木は巧みに混乱を避けて、第1周目の最終コーナーでプロストのオリビエ・パニス選手を立ち上がりでかわして15番手で戻って来る。次の周にはミナルディのルカ・バドエル選手をストレートエンドでアウト側から抜いて第1コーナーに進入する。ここで、ザウバーのペドロ・ディニズ選手が、前方でスピンしたために高木は13番手に浮上して、なおも前方を走るミナルディのマーク・ジェネ選手と、ジョーダンのハンス−ハラルド・フレンツェン選手を追走する。1周につきコンマ4秒という速さでジェネ選手を追い上げる高木ではあったが、その差が2秒を切った8周目、高木のマシンの左リヤドライブシャフトのCVジョイントが破損。スロー走行でピットに戻り、痛恨のリタイヤを喫した。

レースは、終始、フェラーリのシューマッハ選手、アーバイン選手がトップを交代し、さらにピットストップ戦略で追いすがるマクラーレンのクルザード選手とハキネン選手を翻弄、クルザード選手のリタイヤ以降は、完全にハキネン選手を引き離して1−2フィニッシュを達成。3位には、翻弄されて疲労しきったハキネン選手が入った。なお、レース後の再車検において、フェラーリの2台のサイドデフレクターのサイズ規定違反で、暫定的に失格となる波乱が発生。一時はハキネン選手の年間チャンピオンが暫定的に決定したが、その後裁定は、FIAの控訴審議委員会で再度審議されることとなり、再度フェラーリとアーバイン選手は暫定的にコンストラクターズ、ドライバーズの両チャンピオンシップをリードして最終戦日本GPに臨むこととなった。また、フェラーリの監督であるジャン・トッドは、この件の責任をとる形で辞任を表明、混乱が続いている。

高木虎之介のコメント
新しいセパン・サーキットでのレースなので、データが無いのはどのチームも一緒とはいえ、トラブルで走行のチャンスが少なく、レースの直前までセッティングが良い方向に向きませんでした。レースでは、マシン的に格が上のプロストやミナルディを追い抜くことができ、今年の僕の目標である速いところを見せる走りが出来たので、その点では満足していますが、やはり完走できないのは残念ですね。次はいよいよ最終戦の日本GPですが、依然として状況は厳しいままですが、今回のように要所要所で速いところを見せることができるように頑張ります。」

次戦F1世界選手権第16戦日本GPは10月30日〜31日、鈴鹿サーキットにて開催されます。


SPORTS Watchの「川井チャンの現地電送F1レポート」から

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川井チャンの現地電送F1レポート1999 マレーシアGP篇
レース後に待っていたどんでん返し フェラーリの2台が規定違反で失格
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マレーシアGPは誰も予想できない結果になった。びっくりするようなドラマがレース後に待っていたからだ。エディ・アーバインが優勝、そして彼をアシストしたミハエル・シューマッハーがミカ・ハッキネンを抑え2位入賞という理想的な形でフェラーリはレースを終えたが、レース後の車両検査でマシンが技術規定に適合していないことが判明し、失格となってしまったのだ。

■シャドープレートの10mmの欠落に泣いたフェラーリ
FIAの車検委員が指摘する違反の部分とは、前輪の内側後方にあるディフレクターという空力パーツだ。マシンを下側から見た時にこの部分は、マシンの基準面またはそれより5cm高いステップドフロアと同じ高さになければならないと、レギュレーションで決められている。そのためディフレクターを、水平面から見て湾曲させたりする場合には、一番下側の部分にシャドープレートと呼ばれる隠し板をつけるのが普通だ。フェラーリのディフレクターはモノコックに合わせて、上部が広がり下部が内側に絞り込まれた形状になっている。

ところが、それを下側から見た時に、シャドープレートで全てカバーされているかというと、その一部(10mmほど)が欠落しているため、そうなってなかったのだ。レース後、フェラーリ側もこの事実を認め、彼ら2台の失格が決定した。しかし、フェラーリのテクニカルディレクターであるロス・ブラウンは、故意のレギュレーション違反を否定し、またそれによって得られるアドバンテージがほとんどないことを強調。またこのディフレクターは前回のヨーロッパGPから使われているものであり、マレーシアのレース後の車両検査まで何も指摘を受けなかったと反論、この結果を不服として控訴した。

裁定は今週末の金曜日にパリで開かれるFIA上訴裁判で出る予定だ。つまり、それまではミカ・ハッキネンとマクラーレンが暫定チャンピオンということになる。

■完璧なマシンセッティング、完璧なレース運び
このどんでん返しがなければ、マレーシアGPは非常に戦略的なレースだったと言えよう。M.シューマッハーの復帰で意気上がるフェラーリは、予想どおり持ち込まれた2種類のうちの軟らかいエクストラソフトタイヤを選択し、それに合わせ完璧なまでにマシンを仕上げていった。そして予選でフロントローを独占した。

対するマクラーレンは、エクストラソフトではマシンのバランスがとり難いということで終始硬めのソフトタイヤでセッティングを進めた。結果的にクルサードだけはエクストラソフトをチョイスしたが、どちらのタイヤにせよマシンセッティングが思うように進まず、予選でフェラーリの後塵を拝したというのはマクラーレン陣営、特にハッキネンにとって大きなハンディとなってしまった。

マレーシアGPの舞台であるセパンは比較的追い抜きのしやすいサーキットであるが、マシンのパフォーマンスが大きく前を行くライバルを上回らないとやはりダメであった。スタートをフェラーリ勢に完璧に決められてしまったハッキネンは、前を行くM.シューマッハーに翻弄されてしまったことからも明らかである。M.シューマッハーのブロックは完璧で、追い抜きポイントが多い第1セクターと第3セクターはほぼ全力で走り、高速コーナーが多く後ろのハッキネンが仕掛けづらい第2セクターでペースを落とすという巧妙なものであった。ハッキネン/マクラーレン陣営は業を煮やして2ストップ作戦に変えたが、それでもM.シューマッハーは彼らの前に居座り続けた。

それも、M.シューマッハーは、消耗的にキツイと言われていたエクストラソフトで意外とも思われる1ストップ作戦をやってのけたうえでのブロックである。確かにエクストラソフトは溝がなくなるまで走っても極端にペースが落ちることはなく(マクラーレンのロン・デニス監督は、「タイヤの溝がなくなってはルール違反だろう」とレース後に抗議を出すことを考えていた)、それを見事に読みきった完璧な作戦だったといえよう。

■失格取り消しの可能性は低いが…
話をフェラーリの失格問題に戻そう。フェラーリが控訴の根拠としているのは前出のとおり、「ディフレクターは前回のヨーロッパGPから使われているものであり、マレーシアGPのレース後の車両検査まで何も指摘されていない」というものだ。車両規定違反は発見された時のペナルティが大きいだけに、フェラーリが故意にやったものではないことは明白だが、全てのセッションとレースでルールどおりのマシンを用意して走らせるのは、F1グランプリに参加しているチーム側の義務である。指摘されるまで知らなかったのだから「何をいまさら」という意見は通らないだろう。チーム側も決勝で走らせたマシンがルールに適合していないことを認めている上に、過去このようなケースで結果が覆った前例が少ないだけに、今回もフェラーリの主張は通らないのではないかと思われる。

そうは言え、興行面を考えると不利であり、またハッキネンが「このような形でチャンピオンタイトルは欲しくない」と発言しているだけに、覆る可能性がゼロとは言えないだろう。全ては、今週金曜日のパリで決定する。



●FIA、フェラーリの失格を取り消し

優勝決定は日本GPに持ち越し
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【パリ23日】
 国際自動車連盟(FIA)は23日、F1シリーズ第15戦のマレーシア・グランプリ(GP)で車両の規定違反により失格となったフェラーリ・チームからの抗議が正当と認められ、国際控訴裁判所の裁定により処分を取り消したと発表した。この裁定により、第15戦でのミカ・ハッキネン(フィンランド、マクラーレン・メルセデス)の2年連続総合優勝は無効となった。フェラーリのエディー・アーバイン(英国)は、有効となった同GPでの1位ポイントを加え、総合ポイントでハッキネンに4点差をつけてトップ。優勝決定は最終戦の日本GP(31日決勝、三重・鈴鹿)に持ち越された。 (AFP 時事通信社)

P No. Driver Car Lap GoalTime km/h
1 4 E.アーバイン (GBR) Ferrari 56 1:36'38.494
2 3 M.シューマッハ (GER) Ferrari 56 -1.040
3 1 M.ハッキネン (FIN) McLaren Mercedes 56 -12.743 192.576
4 17 J.ハーバート (GBR) Stewart Ford 56 - 17.538 192.309
5 16 R.バリチェッロ (BRA) Stewart Ford 56 - 32.296 191.823
6 8 HH.フレンツェン(GER) Jordan Mugen-Honda 56 - 34.884 191.737
7 11 J.アレジ (FRA) Sauber Petronas 56 - 54.408 191.098
8 10 A.ブルツ (GER) Benetton Playlife 56 - 60.934 190.885
9 21 M.ヘネ (ESP) Minardi Ford 55 - 1Lap
10 5 A.ザナルディ (ITA) Williams Supertech 55 - 1Lap
11 9 G.フィジケーラ (ITA) Benetton Playlife 52 - 4Laps
DNC
22 J.ビルニューブ (CDN) BAR Supertech 48 - 8Laps ギヤボックス
12 P.ディニス (BRA) Sauber Petronas 44 - 12Laps スピンアウト
14 P.デ・ラ・ロサ (ESP) Arrows 30 - 26Laps エンジン
20 L.バドエル (ITA) Minardi Ford 15 - 41Laps エンジン
2 D.クルサード (GBR) McLaren Mercedes 14 - 42Laps エンジン
6 R.シューマッハ (GER) Williams Supertech 9 - 47Laps スピンアウト
15 高木 虎之介 (JPN) Arrows 7 - 49Laps ドライブシャフト
23 R.ツォンタ (BRA) BAR Supertech 7 - 49Laps スピンアウト
18 O.パニス (FRA) Prost Peugeot 7 - 49Laps エンジン
7 D.ヒル(GBR) Jordan Mugen-Honda 0 - 56Laps 接触(フィジケーラ)
19 J.トゥルーリ (ITA) Prost Peugeot 0 - 56Laps エンジン DNS

☆ファステストラップ

HH.フレンツェン 1'40.631 (191.530km/h) On 53/56 Lap

☆ラップリーダー

1〜 3 シューマッハ
4〜25 アーバイン
26〜28 シューマッハ
29〜41 アーバイン
42〜52 シューマッハ
53〜56 アーバイン

☆F1世界選手権ポイント

*ドライバーズ部門
1 アーバイン 70
2 ハッキネン 66
3 フレンツェン 51
4 クルサード 48
5 M.シューマッハ 38
6 R.シューマッハ 33
7 バリチェッロ 21
8 ハーバート 15
9 フィジケーラ 13
10 サロ 10
11 トゥルーリ 7
11 ヒル 7
13 ブルツ 3
14 ディニス 3
15 パニス 2
16 デ・ラ・ロサ 1
16 ヘネ 1

*コンストラクターズ部門

1 フェラーリ 118
2 マクラーレン 114
3 ジョーダン 58
4 スチュワート 36
5 ウイリアムズ 33
6 ベネトン 16
7 プロスト 9
8 ザウバー 4
9 ミナルディ 1
9 アロウズ 1


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